特に確認すべきは爪の状態
足の爪を切ったり、硬くならないために保湿したり、血行を良くするためのマッサージを行ったりなど、足の手入れをすることを「フットケア」といいます。フットケアといえば、ペディキュアを塗るなど足のおしゃれをすることだと思っている人もいますが、高齢者のフットケアはそれとは違います。高齢者のフットケアは、「足を良い状態に保つこと」が目的です。
高齢者のフットケアで一番大切なのは「足の爪」です。二足歩行のわたしたちにとって、身体全体を支える足は重要なパーツですが、その中でも足の爪は身体を安定させる役割があります。歩く動作を思い浮かべてみてください。足の指先で蹴り出して前に進んでいませんか。これは爪が上手く力を足全体に伝えているからです。つまり、爪は力のバランスをとるのに欠かせない、ということです。
しかし、高齢になると皮膚と同じように爪も乾燥してきます。乾燥すると爪は硬く厚みが出てきますし、新陳代謝も衰えているため爪が割れたり、切りにくくなったりしています。爪の状態が悪いと身体のバランスを崩すだけではなく、力を入れにくくなったり、痛みが出たりするため、歩くことが困難になったり、転倒しやすくなります。
そうならないためにもフットケアで足を労わってあげましょう。まずは、足の皮膚の状態を確認し、それから爪の状態を確認していきます。
立ったり歩いたりする時に、足の指がすべて地面についているのが正常な状態です。状態が悪いと指が地面につかなくなります。そうなるとバランスを崩しやすいため転倒するリスクが高まります。また、高齢者の爪は乾燥しているため厚みが出ている場合がありますが、そうなると足に力を入れにくくなったり、靴に爪があたって痛みが出たりします。痛みを感じる程度であればまだ大丈夫ですが、症状が悪化すると歩くのが困難になってしまいます。
足も手と同じように日頃から手入れをしておかなければなりません。しかし、いつでも目につく手とは違い、足には注意が払いにくいため違和感に気づきにくいのです。高齢者の歩き方をよく見てみてください。歩き方が変わっているようであれば足を痛めている可能性があります。膝が痛くて歩けないということもありますが、爪の異常が原因の可能性もあります。足に注目することによって隠れていた病気も発見できるかもしれません。
高齢者の足を見る時は、「足の色」「温度」「ほてり」「かかとのひび割れ」「指と指の間」に注目しましょう。色が黒っぽくなっていればチアノーゼを起こしている可能性があります。また、赤くほてっているようなら炎症が起きているかもしれませんし、かかとのひび割れは乾燥や角質が厚くなる水虫になっている可能性があります。このような場合は内科や皮膚科を受診して適切な治療を受ける必要があります。
高齢者は足トラブルを抱えやすいのですが、それは小さな変化を見逃しがちだからです。年を重ねると神経細胞が減少し、神経伝達速度が低下してしまうためさまざまな感覚が鈍くなってしまいます。小さな痛みにも気づきにくくなるため、放置して状態が悪化してしまうのです。
フットケアには医療行為と見なされてしまう対応もあり、その場合は介護士では対処できません。しかし、医師の許可があれば介護士でも対応可能です。特に注意したいのは爪のケアです。事故につながらないように、安全な姿勢で爪を切るようにしましょう。
フットケア指導士の資格を持っていれば個々の抱えている足トラブルを解消するために症状に応じた指導を行うことができます。フットケアの需要が高まっている介護業界にとって、欠かせない資格のひとつとなっていくことでしょう。
足は第二の心臓とも呼ばれていますが、それは血液の50%が下半身に集まっており血流が滞ると身体全体に悪い影響を与えてしまうからです。全身に新鮮な血液が流れるように、ふくらはぎや足裏がポンプの役割を果たしているため、足の状態を良好に保ち血液の循環を良くすることが大切です。
フットケアは正しい手順で行わなければ効果は期待できません。ここではフットケアの正しい手順についてまとめています。フットケアを行うタイミングやマッサージの仕方など押さえておきたいポイントも紹介していますので、しっかり目を通しておいてください。
介護メディカルアロマ講座はIBCA協会が開催している講座のひとつです。介護に活かせるハンド・フットケアの基本知識と技術が学べます。まずはIBCA協会に登録しなければならず、入会金や年会費が必要ですが、フットケアに役立つ知識と技術が学べるとあって多くの人が受講しています。